英文法でつまずく受動態を一から学ぶ

はじめに

英語を学習している多くの方が「受動態がよく分からない」「いつ使えばいいのか迷う」といった悩みを抱えています。能動態は自然に理解できても、受動態になった途端に混乱してしまうのは決して珍しいことではありません。受動態は英文法の中でも特に重要な項目でありながら、日本語との違いが大きいため、つまずきやすい分野として知られています。

この記事では、受動態の基本的な仕組みから実際の使い方まで、段階的に丁寧に解説していきます。なぜ受動態が必要なのか、どのような場面で使われるのか、そして正しい作り方のコツまで、初心者でも理解できるように分かりやすく説明します。最後まで読んでいただければ、受動態への苦手意識を克服し、自信を持って英語を使えるようになるでしょう。

受動態とは何か – 基本的な概念を理解しよう

能動態と受動態の違い

受動態を理解するには、まず能動態との違いを明確にすることが大切です。能動態は「誰が何をする」という形で、主語が動作を行う文章です。一方、受動態は「何が誰によってされる」という形で、主語が動作を受ける文章になります。

例えば、「Tom reads a book.」(トムが本を読む)という能動態の文があります。この文では、Tom(主語)がread(動詞)という動作を行い、a book(目的語)がその対象となっています。これを受動態にすると「A book is read by Tom.」(本がトムによって読まれる)となり、元の目的語だったa bookが主語の位置に移動します。

日本語でも「トムが本を読む」と「本がトムによって読まれる」という表現の違いがあるように、英語でも同じ出来事を異なる視点から表現することができるのです。

受動態が使われる理由

なぜ受動態という表現方法が存在するのでしょうか。受動態には以下のような重要な役割があります。

第一に、動作を行う人(行為者)よりも、動作を受ける対象に焦点を当てたい場合に使われます。例えば、「この建物は1990年に建てられました」という文では、誰が建てたかよりも、建物がいつ建てられたかという情報が重要です。

第二に、行為者が不明な場合や、あえて述べる必要がない場合に便利です。「My bicycle was stolen.」(私の自転車が盗まれた)という文では、誰が盗んだかは分からないか、重要ではないため、受動態が適切です。

第三に、より客観的で公式な印象を与えたい場合に使われます。学術論文やニュース記事などでは、受動態を使うことで客観性を保つことができます。

受動態の基本的な作り方

現在形の受動態

受動態の基本的な形は「be動詞 + 過去分詞」です。現在形の受動態では、主語に応じてam、is、areを使用します。

単数形の場合:「The letter is written by Mary.」(手紙はメアリーによって書かれる)
複数形の場合:「The letters are written by Mary.」(手紙はメアリーによって書かれる)
一人称単数の場合:「I am helped by my teacher.」(私は先生によって助けられる)

過去分詞の作り方も重要なポイントです。規則動詞の場合は語尾にedを付けるだけですが、不規則動詞の場合は個別に覚える必要があります。例えば、write-wrote-written、make-made-made、break-broke-brokenなどです。

過去形の受動態

過去形の受動態では、be動詞の過去形(was、were)を使用します。

「The house was built in 1980.」(その家は1980年に建てられた)
「The books were read by many students.」(その本は多くの学生によって読まれた)

過去形の受動態は、過去の特定の時点で起こった出来事を表現する際に使われます。歴史的な事実や過去の経験を述べる場合によく見られる形です。

未来形の受動態

未来形の受動態は「will be + 過去分詞」または「be going to be + 過去分詞」の形で作ります。

「The problem will be solved soon.」(その問題は間もなく解決されるでしょう)
「The new school is going to be opened next year.」(新しい学校は来年開校される予定です)

様々な時制での受動態

現在完了形の受動態

現在完了形の受動態は「have/has been + 過去分詞」の形で作ります。過去から現在までの継続や経験、完了を表現する際に使用されます。

「This book has been read by millions of people.」(この本は何百万人もの人々によって読まれてきた)
「The work has been finished.」(その仕事は完了している)

現在完了形の受動態は、結果が現在まで続いていることを強調したい場合に特に有効です。

過去完了形の受動態

過去完了形の受動態は「had been + 過去分詞」の形で、過去のある時点よりも前に完了していたことを表現します。

「The letter had been sent before I arrived.」(私が到着する前に手紙は送られていた)
「The decision had been made by the committee.」(決定は委員会によって下されていた)

進行形の受動態

進行形の受動態は「be being + 過去分詞」の形で、現在進行中の受動的な動作を表現します。

「The house is being painted.」(その家は塗装されている最中です)
「The report was being written when the power went out.」(停電した時、報告書は書かれている最中だった)

進行形の受動態は日常会話でも頻繁に使われる表現なので、しっかりと覚えておきましょう。

受動態でよくある間違いと注意点

by以外の前置詞の使い方

受動態では行為者を表す際にbyを使うのが基本ですが、場合によっては他の前置詞を使うことがあります。

withを使う場合:「The door was opened with a key.」(ドアは鍵で開けられた)
このように、道具や手段を表す場合はwithを使います。

inを使う場合:「The letter was written in English.」(手紙は英語で書かれた)
言語や材料を表す場合はinを使うことがあります。

ofを使う場合:「The house is made of wood.」(その家は木でできている)
材料を表す場合はofを使うことがあります。

受動態にできない動詞

すべての動詞が受動態になるわけではありません。自動詞や一部の他動詞は受動態にすることができません。

自動詞の例:come、go、run、sleepなど
これらの動詞は目的語を取らないため、受動態にはなりません。

状態動詞の例:have、know、like、belongなど
これらの動詞は動作ではなく状態を表すため、通常は受動態になりません。

ただし、文脈によっては受動態になる場合もあるので、例外的な使い方も覚えておくことが大切です。

過去分詞の間違いやすいポイント

受動態で最も間違いやすいのが過去分詞の形です。特に不規則動詞の過去分詞は暗記が必要です。

よく間違える例:
「The window was breaked.」(誤)→「The window was broken.」(正)
「The book was wrote.」(誤)→「The book was written.」(正)
「The food was ate.」(誤)→「The food was eaten.」(正)

不規則動詞の過去分詞は日常的に使われるものが多いので、重点的に練習することをお勧めします。

受動態の実践的な使い方

日常会話での受動態

受動態は日常会話でも頻繁に使われます。自然な会話で受動態を使いこなすためのコツを紹介します。

感情を表現する場合:
「I’m excited about the party.」(私はパーティーに興奮している)
「She was surprised by the news.」(彼女はそのニュースに驚いた)

このような感情表現では、実際には「The party excites me.」や「The news surprised her.」という能動態の意味ですが、受動態の形で表現されます。

物事の状態を表す場合:
「The store is closed.」(店は閉まっている)
「The homework is finished.」(宿題は終わっている)

ビジネス英語での受動態

ビジネスシーンでは、丁寧で客観的な表現として受動態がよく使われます。

「The meeting has been postponed.」(会議は延期されました)
「Your application will be reviewed.」(あなたの申請は検討されます)
「The project was completed on time.」(プロジェクトは予定通り完了しました)

このような表現は、責任の所在を明確にしすぎず、客観的な印象を与えるため、ビジネス場面で重宝されます。

学術的な文章での受動態

学術論文やレポートでは、受動態を使用することで客観性を保つことができます。

「The experiment was conducted under controlled conditions.」(実験は管理された条件下で行われた)
「The results were analyzed using statistical methods.」(結果は統計的手法を用いて分析された)

このような表現は、研究の客観性を保ち、読者に対して信頼性の高い情報を提供するために重要です。

受動態をマスターするための練習方法

能動態から受動態への変換練習

受動態の理解を深めるためには、能動態の文を受動態に変換する練習が効果的です。

練習例:
能動態:「Tom wrote the letter.」
受動態:「The letter was written by Tom.」

能動態:「The teacher explains the lesson.」
受動態:「The lesson is explained by the teacher.」

このような変換練習を繰り返すことで、受動態の構造を自然に身につけることができます。

文章の穴埋め問題

be動詞や過去分詞の部分を空欄にした穴埋め問題も有効な練習方法です。

例:「The house _____ _____ in 1990.」(build)
答え:「The house was built in 1990.」

このような問題を解くことで、適切な時制のbe動詞と正しい過去分詞の組み合わせを覚えることができます。

実際の文章を使った練習

新聞記事やニュース記事を読んで、受動態の文を見つける練習も効果的です。実際の文章の中で受動態がどのように使われているかを理解することで、より自然な英語表現を身につけることができます。

また、自分で短い文章を書いて、意図的に受動態を使ってみることも大切です。日記や簡単な説明文を書く際に、受動態を意識して使ってみましょう。

受動態の応用表現

get + 過去分詞の表現

受動態にはbe動詞を使った形以外にも、getを使った表現があります。これは特に話し言葉でよく使われる形です。

「My car got stolen.」(私の車が盗まれた)
「She got promoted.」(彼女は昇進した)
「The window got broken.」(窓が割れた)

getを使った受動態は、突発的な出来事や変化を表現する際によく使われます。

使役動詞との関係

受動態は使役動詞(make、have、letなど)と組み合わせて使われることもあります。

「I had my car repaired.」(私は車を修理してもらった)
「She got her hair cut.」(彼女は髪を切ってもらった)

これらの表現は、誰かに何かをしてもらうという意味で使われ、日常生活でよく使われる重要な表現です。

情報焦点の受動態

受動態は情報の焦点を変えるためにも使われます。同じ出来事でも、何に焦点を当てたいかによって能動態と受動態を使い分けることができます。

「Shakespeare wrote Hamlet.」(シェイクスピアがハムレットを書いた)
→ 作者に焦点

「Hamlet was written by Shakespeare.」(ハムレットはシェイクスピアによって書かれた)
→ 作品に焦点

このような使い分けを理解することで、より効果的な英語表現ができるようになります。

受動態でよく使われる表現とイディオム

慣用的な受動態表現

受動態には慣用的に使われる表現がいくつかあります。これらを覚えておくと、より自然な英語を話すことができます。

「be supposed to」(〜することになっている)
「You are supposed to be here at 9 AM.」(あなたは午前9時にここにいることになっている)

「be known for」(〜で有名である)
「Japan is known for its technology.」(日本は技術で有名である)

「be made of / be made from」(〜でできている)
「This table is made of wood.」(このテーブルは木でできている)

感情を表す受動態

感情を表現する際に使われる受動態も重要です。これらの表現は日常会話で頻繁に使われます。

「be interested in」(〜に興味がある)
「I’m interested in learning French.」(私はフランス語を学ぶことに興味がある)

「be worried about」(〜について心配している)
「She is worried about her exam.」(彼女は試験について心配している)

「be satisfied with」(〜に満足している)
「We are satisfied with the results.」(私たちは結果に満足している)

受動態を使った丁寧な表現

受動態は丁寧な表現を作る際にも有効です。直接的すぎる表現を避けて、より丁寧に伝えることができます。

「Smoking is not allowed here.」(ここでは喫煙は禁止されています)
「You are requested to turn off your mobile phone.」(携帯電話の電源をお切りください)

このような表現は、公共の場所での案内や正式な依頼の際によく使われます。

受動態の理解を深めるための追加のポイント

文体による受動態の使い分け

受動態の使用頻度は文体によって異なります。学術的な文章やニュース記事では受動態が多用される傾向がありますが、日常会話では能動態の方が多く使われます。

フォーマルな文章での例:
「The policy was implemented by the government.」(その政策は政府によって実施された)

カジュアルな会話での例:
「The government implemented the policy.」(政府がその政策を実施した)

このような違いを理解することで、場面に応じた適切な表現を選ぶことができます。

受動態と能動態の選択基準

受動態と能動態のどちらを使うかは、以下の要因によって決まります。

情報の重要度:重要な情報を主語の位置に置く
行為者の明確さ:行為者が不明または重要でない場合は受動態
文章の流れ:前の文との関連性を考慮
読者の関心:読者が最も関心を持つ要素を主語にする

これらの要因を考慮して、適切な文体を選択することが重要です。

受動態の省略形

受動態では、行為者(by以下)が省略されることがよくあります。これは以下のような場合に起こります。

行為者が一般的で明らかな場合:
「Rice is grown in Asia.」(米はアジアで栽培される)
→ 農家が栽培することは明らか

行為者が重要でない場合:
「The window was broken.」(窓が割れた)
→ 誰が割ったかは重要でない

行為者が不明な場合:
「My wallet was stolen.」(私の財布が盗まれた)
→ 誰が盗んだかは不明

受動態学習のための効果的な勉強法

段階的な学習アプローチ

受動態を効果的に学習するためには、段階的なアプローチが重要です。

第1段階:基本的な現在形と過去形の受動態をマスターする
第2段階:様々な時制の受動態を理解する
第3段階:実際の文章や会話での使用法を学ぶ
第4段階:自分で受動態を使った文章を作成する

この順序で学習することで、無理なく受動態を身につけることができます。

継続的な練習の重要性

受動態をマスターするためには、継続的な練習が不可欠です。毎日少しずつでも受動態に触れることで、自然に使えるようになります。

おすすめの練習方法:
– 毎日3つの能動態の文を受動態に変換する
– 英語のニュース記事で受動態を見つける
– 受動態を使った短い文章を作成する
– 音読練習で受動態のリズムを身につける

間違いを恐れない学習姿勢

受動態の学習では、間違いを恐れずに積極的に使ってみることが大切です。間違いは学習の過程で自然に起こるものであり、それを通じて正しい使い方を身につけることができます。

間違いから学ぶためのポイント:
– 間違いを記録して復習する
– なぜ間違ったのかを分析する
– 正しい形を何度も練習する
– 同じ間違いを繰り返さないよう注意する

まとめ

受動態は英文法の中でも重要な要素であり、正しく理解することで英語表現の幅が大きく広がります。この記事では、受動態の基本的な概念から実際の使い方、よくある間違いや効果的な学習方法まで、幅広く解説してきました。

受動態をマスターするためには、基本的な形をしっかりと覚え、様々な時制での使い方を理解し、実際の文章や会話で練習することが重要です。また、能動態と受動態の使い分けを理解することで、より自然で効果的な英語表現ができるようになります。

今回学んだ内容を復習し、日常的に受動態を使った文章を作成してみてください。継続的な練習を通じて、受動態への苦手意識を克服し、自信を持って英語を使えるようになることを願っています。この記事をブックマークして、受動態で迷った時にいつでも参考にしてください。